わが動的平衡とレジリエンスの思索日記

直腸がん、C型肝炎が完治し、これからが今までを決める、、という身の処し方を綴る
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町山智浩の映画評論に浸かる

6月から肝炎治療を始めてから、
YouTubeをさかんに見る、というより
聴くようになった。

武田鉄矢さんの心臓疾患闘病記とか、
青山 さんの政治評論とか、
小林秀雄の講演とか、
聴いていたが、今は専ら
町山智浩さんの映画評論を聴いている。

音声を聴くだけだが、筆が立っている。
聴き手の腹に落ちてくる。編集者として
自分の経験を包み隠さずに話されている。

水道橋博士が、師匠北野武の次に、
博士と同じ歳だが、町山さんを
師と仰ぐと言っていた。
その博士の思いが分かる気がしている。

いっぱい聴いたが、なかでも
ポールニューマンの「暴力脱獄」
の話が秀逸だった。以下、参照。



・あらすじ

ポールニューマン演じるルークという主人公が、パーキングメーターを壊したという些細な罪でフロリダの厳しい刑務所に入ってくるんです。で、ルークの態度がヘラヘラとしてることで、刑務所でのボス・牢名主のジョージケネディや看守たちに目をつけられてしまう。そしてその牢名主にルークはポコボコにやられてしまうんです。でも何度殴って倒してもルークは立ち上がってくるんです。

それでもヘラヘラと笑いながら、殆ど死んだ状態でも立ち上がってくるんで、最後には殴ってる牢名主のほうが怖くなって音をあげて負けてしまうんです。それで、おまえ凄いやつだってことになって、牢名主がルークのことを好きになってしまうです。

そんなルークのことを他の囚人たちもだんだん好きになっていくんです。これは日本で同時期に発表された漫画「あしたのジョー」にそっくりなんです。だからルークをあしたのジョーに見立ててみてみると分りやすいです。

それで、刑務所は罪を償うところで笑っちゃいけないところなのに、彼につられてみんなが楽しく笑うようになっていくんです。囚人を苦しめようとする労役である強制労働でさえ、ルークが「面白いじゃないか、競争しようぜ」といって楽しくやってしまうんです。囚人を苦しませようとする看守たちの思惑に反して、喜んで楽しそうに終わらせてしまうんです。だからコノヤローってなるわけです。

・みどころ

この映画が面白いところは、最高のクライマックスシーンというのが、ゆで卵を食べるシーンなんです。アクションとか決闘じゃないんです。ルークが突然「ゆで卵50個たべれるぜ」と大口を叩くんです。どうみたって食べられっこないんです。実際医学的にも無理な数でなんですが、「それじゃ賭けるか」ってなって、ルークはゆで卵を食べ始めるんです。

何個も食べ続けるんですが、もう殆ど不可能で、だめになっていくんですが、それでも食べ続けるんです。そうするとだんだん皆があつまって応援しだして、囚人達も一緒にモグモグして、噛み始めるんです。口になにもはいってないですけど。これでルークと心がひとつになっていくんです。この卵たべるというシーンで、何にもない打ちひしがれている囚人たちに意味のない希望を与えてしまうんです。

・アメリカ唯一の実存主義の映画

実はこれは凄い深い映画で、アメリカで殆ど唯一の実存主義の映画だといわれているんです。それは刑務所自体を「人生」と見立てている映画だからなんです。ポールニューマンが台詞の中でこう言うんです。

「刑務所の中も外も同じだよ、だから俺はここへ来たんだ。なんだかよくわかんない人が威張っていて、そいつらは金持ちになっていて、わけのわからないルールで縛って、皆はそれにしたがって生きているだろう。意味もないのに。そんなのまったく意味ないだろう。でも、楽しく生きなきゃ、負けたことになるだろう。人生が大変だなんて苦しんだら、負けになっちゃう。だったら笑顔でいようぜ。」というわけです。

で、なぜルークがそんなことを言う男になったかっていうと、彼は戦争でもの凄い酷い目にあったんですね。自分は戦場で人を殺したし、人が人を殺す所を見て、完全に人間に絶望したんですよ。それから現実社会のアメリカに帰ってきたら、アメリカ社会の金とか出世とか権威とか、そういったものがバカバカしく見えたんです。人間の本当の真実を見てしまったために。

それから、もうそんな社会はバカだ、笑うしかないと、笑い始めたんですよ。ニヒリストですね。虚無なんです。世の中のものに何も価値を見出せない。彼がなぜ殴られても蹴られても、笑って平気かっていうと、自分の命すら大事に思えなくなってしまっていたんです。

これはコリンウィルソンの書いたアウトサイダーという哲学本があるんですけど、その典型的な例なんです。現実社会の価値観に意味を見出せなくなってしまった男なんです。

ただ、彼がそういったヘンなことをすればするほど、囚人たちがどんどん元気になっていくんです。怖いものないから、失うものはないから、ポーカーでもなんにもない手なのに勝とうとする(cool hand)んだけど、彼は「何にもないほうが一番強いんだよ」というんです。そんな彼の考えに囚人たちは勇気付けられて、だんだん囚人たちに笑顔が戻ってくるわけです。

ところがそれは看守達に絶対許せないことなんです。この映画の中で、看守というのは唯の看守を意味しているわけではなく、世の中の権威とか権力とかルールやきまりごとを意味してるんです。社会といいうものは、人間を屈服させてルールに従わせること、ルールの奴隷にすることが目的なんであって、その奴隷にならないやつは、本当に許せないわけです。

・ルークとは何者か

で、結局ルークは最後犠牲になっちゃうんですよ。つまりルークっていうのはキリストなんです。卵を沢山食べてヘタって両手を広げて裸で倒れるシーンがありますけど、そのときもキリストが十字架にかけられるシーンのように倒れるんです。ルークという名は聖書のルカという使徒から名前をとっているんですけども、ルークはあきらかにキリストなんです。

ルークは天の神様に向かっていうんです。この世の中になにも価値を見出せないし、なにも信じられない。けれども、本当の生きる意味があるとしたなら、神様が教えてくれるに違いないだろうと、「俺に教えてくれ!何のために生きるか教えてくれ!」。
でも答えなんかないですよ。

実存主義っていうのはヨーロッパで生まれた哲学ですけども、神様がいないってことがだんだんわかってきたんですね。ヨーロッパで。近代になって。天国もないと。じゃ、今まで神様に従って生きればいいと思っていたけど、神様がいないなら俺達は何のために生きているんだろう。それが実存主義の哲学になったわけです。

でもアメリカの場合、キリストの存在が強いので実存主義って生まれなかったんですよ。全員が神様いるって信じて、神様のいうとおりに生きればいいって信じていたから。この映画では神様に何度も訴えかけるけど、なんにも答えないわけです。だからこれがアメリカ唯一の実存主義の映画だって言われているんです。でもそのなかでどうやって生きるかってことを探ろうとする(ルークの)物語なわけです。

・この映画の言いたかったこと

この映画でルークは最後まで世の中に屈服しない。この映画のラストは囚人たちがルークのことを思い出すシーンで終わるんです。それは最初にいった「あいつは笑ってたよ。いつだって笑ってたんだ」という場面なんです。

それによってわかるのはルークっていうのは自分の生きる意味を見つけらなかったけど、生きる意味があったんですね。それは最後まで闘い続けて絶対に負けないで笑顔を忘れなかった。だからその笑顔が他の人たちの心に永遠に残るんです。それで他の人たちは、この厳しい社会でも生きていけると思うようになった。

彼はみんなに勇気や希望を与えるために生きてきたんです。まさにキリストなんです。ですから神を否定しながらも、それをさらに超えた人間の意味まで語ってる映画がこの「暴力脱獄」なんです。

ポールニューマンはユダヤ人でキリスト教を信じてはいないんです。これは神がいるって言っている映画ではない。神がいないなら君達がキリストになればいいじゃないか。キリストのように生きてみろ。くだらないルールに従うな、そういうことを訴えてる映画なんですよ。本当の正しいものを自分で捜せということなんです。

TBSラジオストリーム・町山智浩・コラムの花道より (9・30.2008)。

この話はココで聞けます

~~~~~~

以上。
町山さんは淀川長治さんの映画批評を
きちんと継承していて、読解が深い。

わたしはこの映画をテレビの
洋画座か何かで見ていた。

脱獄できたのに、なんでまた
やすやすと刑務所に戻ってしまったのか、
と思ったものだ。

あと、サラリーマンのとき、
こころの支えになっていた映画だった。
これに近いことは、少しできたと思っている。


Comment

気圧の変化
編集
taka-tanoさんへ

> その後お加減いかがでしょうか?

今週に入ってから、なんとなく体調は
よくなっているような気がします。

> 私もこの連休は調子が悪く、昨日と今日の午前中寝ておりました。
気温の差や気圧が関係しているかもしれません。頭痛と倦怠感が酷いです。

本当に、好不調は予測できませんね。
気圧の変化で、わたしの場合も
たしかに頭痛がしたりします。

> ゴールが近いというのに、
まだまだ油断ができません。
今日は本当に肌寒いです。
慌ててタンスからフリースを引っ張り出しました。

ホントに油断できませんね。
注射の翌日は辛くなることが多いのですが、
今夜は、まだ辛くなく、万歩計をポケットに
入れて、散歩しようかと、思っています。
でも、やり過ぎないようにします。

あとひと月、互いに頑張りましょう。
すべて、うまく行くとしんじて。
2014年10月16日(Thu) 19:20
No title
編集
山口様

その後お加減いかがでしょうか?
私もこの連休は調子が悪く、昨日と今日の午前中寝ておりました。気温の差や気圧が関係しているかもしれません。頭痛と倦怠感が酷いです。

ゴールが近いというのに、まだまだ油断ができません。今日は本当に肌寒いです。慌ててタンスからフリースを引っ張り出しました。
2014年10月13日(Mon) 18:57












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