わが動的平衡とレジリエンスの思索日記

直腸がん、C型肝炎が完治し、これからが今までを決める、、という身の処し方を綴る
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宮本百合子とマルグリット・オードゥー

2月19日、長女の合唱団の発表の付き添いで帰りに、東府中駅にのったとき、反対側の席で、宮本太郎氏が新書本を読んでいるところに遭遇した。ずいぶん前に亡くなられた宮本顕治氏のご子息で、どこかの大学教授だが、顕治氏の政党を支持されてはいない。宮本太郎氏は細面で、身長は180センチくらいにみえた。宮本顕治氏の後妻のお子さんのようだ。先妻の宮本百合子さんとの間にはお子さんはおられなかったわけだ。

そのころキンドルで、宮本百合子の「知生の開眼」を読んでいたので、瞬間、ささやかな共時性を感じていた。で、その本の冒頭に、結論が出ている、、こう書かれている。
知性というとき、私たちは漠然とではあるが、それが学識ともちがうし日常のやりくりなどの悧巧さといわれているものともちがった、もう少し人生の深いところと関係している或るものとして感じとっていると思う。教養がその人の知性の輝きと切りはなせないように一応は見えるが、現実には、教養は月で、知性の光を受けることなしにはその存在さえ示すことが出来ないものと思う。教養ということは範囲のひろい内容をもっているけれども、そういう風な教養は外から与えられない環境のなかで、すぐれたいい素質として或る知性を具えているひとは、その知性にしたがって深く感じつつ生活してゆく間に、おのずから独特な人生に対する態度、教養を獲えてゆくという事実は、人間生活の尽きぬ味いの一つであると思う。
 この人生への愛。ひとと自分との運命を大切に思って、そこから美しい花を咲かせようとつとめる心。そのためには自然欠くことの出来ない落付いた理性の判断と、柔軟溌溂な独創性、沈着な行動性。それ等のものが、知性と云われるもののなかにみんな溶けこんでいて、事にのぞみ、場合に応じ、本人にとっては何か直感的な判断の感じ、或はどう考えてもそうするのが一番よいと思えるというような感情的な感じかたで、生活に作用してゆく。知性というものは抽象の何ものでもなく活々としてしなやかなダイナミックな生活力そのものにつけられた名である。


そうしてこの本の中で、マルグリット・オードゥー(フランス語:Marguerite Audoux)というフランス人女性作家をとりあげている。自分のためだけに小説を生涯で3冊、書いたという。1863年7月7日 - 1937年1月31日の一生だった。宮本百合子さんは、次のように紹介し、作家の知性のありようを示されている。

オオドゥウは中部フランスの寒村に生れた孤児みなしごであった。育児院で育てられて、十三歳からノロオニュの農家の雇娘で羊飼いをした。巴里へ出てからは十九歳の裁縫女として十二時間労働をし、そのひどい生活からやがて眼を悪くして後、彼女は自家で生計くらしのための仕立ものをしながらその屋根裏の小部屋の抽斗の中にかくして、「ただ自分一人のために」小説をかきだした。それが「孤児マリイ」であった。つづけて「マリイの仕事場」を書き、「光ほのか」は一九三七年彼女の死ぬ年脱稿された。どの作品でも、オオドゥウは寄るべない一人の貧困な少女がこの世の荒波を凌いで、俗っぽい女の立身とはちがう人間らしさの満ちた生活を求めて、健気けなげにたたかってゆく姿を描いているのであるが、最近出版された「マリイの仕事場」は、オオドゥウの人生に対するまともさ、暖かさ、健全な怒りと厭悪、働いて生きてゆく女、人間として現実を見ている眼の明晰さが、最も美しくあらわれている作品だと思う。オオドゥウの、そのままで一つの物語をなしているような生涯がそれだけで彼女にあのような作品を書かせているのではなく、物語のようでさえある生活の様々の推移の場面で、彼女がそこに何を感じ、何を身につけて生きて来たかという、その生きかたの窮局が、彼女に彼女にしかない生活のみのりをもたらしているのである。

この女性作家の存在は驚きだった。早速、図書館の検索をかけたが、単独では出てこなかった。堀口大学全集のどこかにあるのかもしれないが、、読みたくてたまらなくなり、Amazonの中古本で「孤児マリ-」を購入することにした。

ウィキペディアによると、彼女の最期は不遇のうちに亡くなったが、その素朴な作品は写実的で、「何故あんなに美しい物語を書けるのか?」と言う質問に対し「あたし、なんにも知りませんの。あたし、なんにも学んだことがないんですの。ただ、あたしは、夢想することが好きでした!」と答えるだけだった、とあった。ますます、読みたくなった。

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